「この書物は一体何ですか?」

ヴィンセントが瞳を輝かせながら訊ねると、お茶とお菓子を持ってきたハナエが口を開く。

「それは、この辺りの土地の歴史や伝説、昔話などが書かれています。古い家なので、そういうのが出てくることがあるんです。でも、捨てることが何故かできなくって……」

「あの、読んでもいいですか?」

イヅナは恐る恐る訊ねる。父の生まれて育ってきたこの国の昔話などを知りたいという気持ちがあったのだ。

「全然構いませんよ」

ハナエから許可を貰い、イヅナたちは書物などを広げて読み始める。普段は読書などを全くしないレオナードまで巻物を広げており、ヴィンセントが二度見していた。

「へえ〜。こんな風に絵だけが描いてあるの面白いな」

レオナードが広げた巻物には文字は書かれておらず、絵だけであった出来事が表現されている。

「こんな伝説がこの国にはあったんだな」

ツヤが書物を興味深そうに見つめ、ヴィンセントが「こっちの書物も面白いですよ」と声をかける。