「……いいのかしら?」

イヅナは困り顔でヴィンセントの方に目を向ける。ヴィンセントも戸惑った表情だ。

「……ギルベルトさんの近くにいるツヤさんがいいって言っているなら、いいのかな?」

とは言え、親しき仲にも礼儀ありという言葉がある。困り果てる二人に、くつろいでいる二人が言った。

「お前たちも任務のことは忘れてボウッとしろよ」

「物を意図的に汚したり壊したりしなければ、少々肩の力を抜いてもいいんじゃないか?」

「はあ……」

二人はまた、困った顔で見つめ合う。

ギルベルトの別荘は、都市部から離れた森の中にある木造建ての二階建てだ。近くには湖や川があり、一緒に別荘に来たチターゼ・グランツとアレン・ホッジンズは湖の周りを散歩しに行くと先ほど出て行った。

他に別荘に来たチェルシー・モールバラと、エイモン・ウィーズリーは別荘の裏にあるテニスコートでテニスを楽しんでおり、ベラ・ゴドフリーは部屋で休んでいる。ギルベルトは忘れ物をしたと言い、別荘を二時間ほど前に出て行った。