イヅナが助けた女性の名は、ハナエ・タケナカと言う。彼女が自己紹介をし、イヅナたちも自己紹介をした後、彼女の家へと向かう。

「タケナカ家は何十年も前からこの土地に住んでいて、その昔は地主だった頃もあるみたいです。事情があって土地を全部売って、今は普通の農家ですけど」

「あのクソ男より、あんたの家が地主だった方がよかっただろうな」

ツヤの言葉に、レオナードとヴィンセントが同意したように何度も頷く。イヅナもそれを肯定し、きっとその頃はこの村は今より過ごしやすかったのだろうと考えた。

「フフッ。そう言っていただけると、嬉しいです」

ハナエは微笑み、平家の大きな家の前で足を止める。ここがどうやら彼女の家らしい。

「ここに住んでいるのはもう私一人だけですから、好きな部屋を使ってくださいね」

「お邪魔します!」

イヅナたちはそう言い、家の中に入る。全ての部屋には畳が敷かれ、どこか落ち着いた空間だ。そんな部屋の棚には、古そうな書物や巻物がたくさん並べられている。