「私も、瑛理のこと好きだよ」

かちこちの硬い表情だった自信がある。大きな声過ぎて、全然告白っぽくならなかった。
しかし、瑛理はこくんと喉を鳴らし、おそるおそる私の顔をのぞき込んできた。

「柊子、……それ、本当か?」
「好き。ずっと好きだったよ。好かれてないんじゃないかって思ってたから、言えなかったの」
「離婚っていうのは……」
「私ばっかりが瑛理を好きで結婚生活を送るのはつらいと思ったんだ」

私たちは同じことで悩んでいた。相手の気持ちがわからなくて、好かれていないと思い込んで余計に壁を立てていた。踏み込めないで背中を向けていた。
瑛理が先に振り向いてくれた。私の心に踏み込んでくれた。

「瑛理が私のこと、好きだって言ってくれて……私も勇気を出さなきゃって」

瑛理が腕を伸ばし、私の身体を抱き寄せた。ぎゅうっと力をこめられ、そのきついほどの抱擁が嬉しい。

「瑛理……」
「嬉しい。柊子は俺に興味ないと思ってたから」
「ずっと、好きだったよ。やっと言えた」

私のこめかみに瑛理が頬ずりする。その愛情のこもった行為に、胸が熱くなる。

「この前、同居OKって言ってくれたとき、ちょっとは気持ちがあるかなって期待した。それだけですごく嬉しくて。だけど、好きでいてくれたなんて。両想いだったのかよ」
「私たち、結構鈍感なんだね。周りは私たちが両想いなの、気づいてたみたい」
「もっと早く言えばよかった。バカだな、俺たち」

瑛理が私の顔を見下ろしてくる。細められた目は少しうるんですら見える。可愛い。綺麗。

瑛理って、こんな顔を見せてくれるの?
このまま、私にどこまで見せてくれるの? 私も瑛理に全部見せるの?
間近く見つめ合い、今にもキスができそう。いい、瑛理とならどこまで先に進んでもいい。知りたいし、知ってほしい。