午後の仕事は、早急に片づけた。頭の中では昨晩河東くんと話したことが浮かんでいる。
ちょうどいい。今夜はっきりと瑛理に気持ちを伝えよう。
私のことを好きでもないくせに『ちょうどいい相手』だと妻にした瑛理。家族や周囲にばかり愛妻家アピールをして、自分の株をあげたいだけの瑛理。
私の気持ちを知れば驚くでしょう。

都合のいい幼馴染が実は自分のことを好いていたと知ったらどう? 
瑛理のことだ、途端に面倒くさくなるに決まっている。私といるのが嫌になるなら、離れるきっかけになる。
それでもなあなあにして結婚生活を送るつもりなら、今度こそ離婚に踏み切る。
どちらにしろ、今夜で終わりだ。

でも、万が一……本当にわずかな可能性として、私の気持ちを知った瑛理が変わってくれるということはある? 私のことを女として意識して、好きになる努力をしてくれる?
そんなに好いてくれるなら、大事にしようって思ってくれたりする?
……いや、やめよう。
瑛理は冷たくて意地悪で、私の扱いは昔から雑そのものだったじゃない。そんな淡い希望は持っちゃだめだ。

それでも私は定時きっかりに仕事を上がり、父と兄より先に家に帰ると、大急ぎで身なりを整えた。髪をとかし、メイクを直し、着替えもした。
緊張していた。これから瑛理に気持ちを伝えるのだ。