離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる

「あ、友達からのメッセージだ」

柊子はそう言って焦った様子でスマホをひっこめた。ファーストネームの表示がなかったせいか、水平はそれが男からのメッセージだなどと思っていないようだった。俺にはしっかり見えていたけれど。
この雰囲気だと、電話で話したりするのは一度や二度ではないのだろう。
仲がいいのは間違いなさそうだ。そしてそれはどういうことだろう。柊子は恋愛をする気はないと言っていた。今は一応人妻だから誰とも交際しないとも。
一方で、依然俺との離婚を考えている。やっぱり河東と関係しているのだろうか。


食事が終わって、水平がこの後どうするか言う前に、俺は口にした。

「水平、俺たちは買ったものをマンションに運ぶんだ。また明日な」
「あ、はい。今日は突然ご一緒してしまいすみませんでした」

壁を立てる言葉に、水平は丁寧に頭を下げた。先ほどの明らかに悪かった顔色などなかったように、よく作りこまれた笑顔だ。

水平と別れ、俺は柊子とデパートの外へ出る。メトロはすぐそこだ。

「瑛理、さっきのメッセージのことだけど」

柊子が先に口を開いた。階段を降り、改札を抜ける前、少し立ち止まって。
俺は柊子の腕を引き、改札から離れた。人通りの比較的少ない通路で向かい合う。

「河東だったな。メッセージ」
「あのね」
「電話するのか?」

柊子が言葉に詰まり、それから言った。

「河東くんには、……色々相談にのってもらっていたんだ」