「でも、水平さん、そういう可愛い服装も似合いそうだね。私、全然そういうの着たことなくて」
「あはは、誰でも似合いますよぉ。柊子さんは身体が引き締まってるから、脚とかガンガン見せちゃってほしいなあ」
水平が困った顔をしているのを察したのか、柊子が助け舟を出し、さらに話題を変える。
「そういえば水平さんはご実家ってどのあたり? 中高ってどこらへんかな」
「あ、えっと今の実家は東京の端っこの方で。えへへ、田舎なんです。中高は……」
ぼそっと名前を出したのは私立の名門だ。偏差値も高い進学校で、別に言いづらい学校ではないと思うんだが。
「あ、その学校、兄貴が剣道部のコーチで通ってたんじゃないかな」
ぎくりと水平が固まる。どこか沈痛にも見える表情をしているのは珍しい。もしかすると、嫌な話題だったか。水平が兄を嫌がる理由もそこにあったりして。
ちょうどいい。水平には悪いが、嫌な話題を続けて俺と柊子の大事なデートから帰ってもらおう。
しかし、これまた水平の顔色を心配した柊子が話を変える。
「あんまり盛り上がらない話題を出しちゃった。ごめんね。そうそう、家具の話をするんだったよね。私はこんなのが欲しかったんだけど、瑛理がダメだって」
どこまで心が清らかなのか、柊子は水平を気遣ってスマホの画面で写真を見せたりしている。俺としてはふたりの仲を裂こうとやってきている後輩を追い出したいのだが。
「柊子」
声をかけたときだ。柊子の手のスマホが震え、液晶に『H.Kawato』と表示された。
バナーで現れた名前の下には、ロックを解除しているせいかメッセージの中身も表示されていた。
【あとで電話できる?】
俺の背に冷たい汗が流れた。
電話ってなんだよ、柊子。河東とまだ連絡を取り合っている上に、電話で話す仲なのかよ。
「あはは、誰でも似合いますよぉ。柊子さんは身体が引き締まってるから、脚とかガンガン見せちゃってほしいなあ」
水平が困った顔をしているのを察したのか、柊子が助け舟を出し、さらに話題を変える。
「そういえば水平さんはご実家ってどのあたり? 中高ってどこらへんかな」
「あ、えっと今の実家は東京の端っこの方で。えへへ、田舎なんです。中高は……」
ぼそっと名前を出したのは私立の名門だ。偏差値も高い進学校で、別に言いづらい学校ではないと思うんだが。
「あ、その学校、兄貴が剣道部のコーチで通ってたんじゃないかな」
ぎくりと水平が固まる。どこか沈痛にも見える表情をしているのは珍しい。もしかすると、嫌な話題だったか。水平が兄を嫌がる理由もそこにあったりして。
ちょうどいい。水平には悪いが、嫌な話題を続けて俺と柊子の大事なデートから帰ってもらおう。
しかし、これまた水平の顔色を心配した柊子が話を変える。
「あんまり盛り上がらない話題を出しちゃった。ごめんね。そうそう、家具の話をするんだったよね。私はこんなのが欲しかったんだけど、瑛理がダメだって」
どこまで心が清らかなのか、柊子は水平を気遣ってスマホの画面で写真を見せたりしている。俺としてはふたりの仲を裂こうとやってきている後輩を追い出したいのだが。
「柊子」
声をかけたときだ。柊子の手のスマホが震え、液晶に『H.Kawato』と表示された。
バナーで現れた名前の下には、ロックを解除しているせいかメッセージの中身も表示されていた。
【あとで電話できる?】
俺の背に冷たい汗が流れた。
電話ってなんだよ、柊子。河東とまだ連絡を取り合っている上に、電話で話す仲なのかよ。



