離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる

「志筑先輩ってそんな子どもだったんですか~」
「そうなの。頭はいいけど、すごく意地悪だったんだよ。私は本当に嫌だったなぁ」

俺の目の前で妻と後輩が俺の話をしている。
デパートのレストランフロアに出展している老舗の洋食屋に入り、ランチを食べながらずっとこの状態だ。

柊子は持前の分け隔てなく接する精神なのか、水平相手によく喋り場を盛り上げようとしている。
水平は空気を読むのがうまいので、一見すると柊子とかなり仲が良くなったように見えた。

そう、実はこの水平しえ、賢く仕事ができるのだ。
なんでもそつなくこなし、周囲に愛されるタイプだ。俺と似ている。

だから、俺は水平にどこか同族嫌悪の感情を抱いてしまう。
能力を隠してできないふりをして俺に近づいたり、休みの日に強引に近づいてくる彼女に苛立ちを隠しきれない。

「おふたりは許嫁で高校までは同じ学校にも通われていたんですねえ」
「まあ、ただの友達って感じで、あんまり一緒にもいなかったけどね」
「でも、うらやましいなあ。私も志筑先輩と柊子さんの後輩がよかったなあ」

わざとらしく媚びを売る水平に、俺はちょっと棘を出す。

「確か大学は矢成の後輩にあたるんだよな。矢成が大学時代の水平のこと覚えてたよ」

その言葉は確かに嫌な言葉だったようで、水平が頬をひくつかせた。

「結構今と感じが違ったって。髪の色も明るくて、服装もギャル系だったって聞いたけど」
「お友達が賑やかだったから、マネしてみたんですけど、私には合わなかったみたいで」

一生懸命言い訳する水平は、やはり清楚系でやっていきたいようだ。俺が知っているとは思わなかったのだろう。