「レストランフロアへ行くか。少し時間がずれたから、空いてる店もあるだろ」
時計を見ながらそう言って、顔をあげた。すると、俺の視界に見たことのある女子がうつる。
「志筑先輩」
俺と柊子に近づいてきたのは水平しえだ。
なぜ、こんなところに。そう考えてすぐに思い至った。
同期の矢成に昨日の昼休みに話していたのだ。今日の買い物のことを。人気のある海外家具の量販店はやめて、老舗のデパートにしたと。
水平のデスクは近い。きっと聞いていたに違いない。
「偶然ですね。今日はお買い物ですか?」
おいおい、ちょっとストーカーっぽいぞ、この子。なんて思いつつも、人当たりのいいことに定評のある俺は、あたりさわりのない笑顔を作る。
「本当に偶然だな。水平も買い物か?」
「ええ、友達に誕生日プレゼントをと思って。志筑先輩は奥様とお買い物だったんですね」
「今日は家具を買いに。な、柊子」
俺はわざとらしく柊子の肩を抱いた。人前なら柊子は怒らないはずだ。
「わあ、どんな家具を買われたんですかぁ? 私、引っ越しを考えてて。新居や家具のお話、参考までに伺いたいなあ」
水平の媚びた笑顔に、柊子が困ったように笑いながら言う。
「私たち、これからお昼なんです。ええと、よろしければご一緒しませんか?」
柊子、おまえはどうしてそう甘いんだ。そこは誘うところじゃないだろう。俺は即座に口を挟む。
「いや、水平も休みの日まで先輩の相手をしたくないだろ」
「ええ、いいんですかあ!? ぜひ、ご一緒したいです~!」
俺の言葉は水平の甲高い声にかき消されたのだった。
時計を見ながらそう言って、顔をあげた。すると、俺の視界に見たことのある女子がうつる。
「志筑先輩」
俺と柊子に近づいてきたのは水平しえだ。
なぜ、こんなところに。そう考えてすぐに思い至った。
同期の矢成に昨日の昼休みに話していたのだ。今日の買い物のことを。人気のある海外家具の量販店はやめて、老舗のデパートにしたと。
水平のデスクは近い。きっと聞いていたに違いない。
「偶然ですね。今日はお買い物ですか?」
おいおい、ちょっとストーカーっぽいぞ、この子。なんて思いつつも、人当たりのいいことに定評のある俺は、あたりさわりのない笑顔を作る。
「本当に偶然だな。水平も買い物か?」
「ええ、友達に誕生日プレゼントをと思って。志筑先輩は奥様とお買い物だったんですね」
「今日は家具を買いに。な、柊子」
俺はわざとらしく柊子の肩を抱いた。人前なら柊子は怒らないはずだ。
「わあ、どんな家具を買われたんですかぁ? 私、引っ越しを考えてて。新居や家具のお話、参考までに伺いたいなあ」
水平の媚びた笑顔に、柊子が困ったように笑いながら言う。
「私たち、これからお昼なんです。ええと、よろしければご一緒しませんか?」
柊子、おまえはどうしてそう甘いんだ。そこは誘うところじゃないだろう。俺は即座に口を挟む。
「いや、水平も休みの日まで先輩の相手をしたくないだろ」
「ええ、いいんですかあ!? ぜひ、ご一緒したいです~!」
俺の言葉は水平の甲高い声にかき消されたのだった。



