離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる

言葉を失った。シングルじゃなくていいのか? 俺と一緒に寝てくれるのか? 驚いている俺に、柊子が頬を赤らめて必死に言い訳をする。

「友達が言うには、家族が遊びにきたときに寝室が分かれてたら不仲に見えるって。いっそダブルベッドの方が仲がよさそうに見えるって言うんだ」

誰だ、柊子にそんなことを吹き込んだのは。
今すぐその柊子の友人と硬い握手をしたい。いい仕事をしすぎている。

「でも、やっぱりダブルベッドなんて変だよね。困るよね」
「いや、そうしよう」

俺は食い気味に言った。

「確かに姉貴は帰国したら真っ先に遊びにきそうだ。寝室は一緒で、ベッドもダブルの方が安全だな」
「え、で、でも」
「この前の旅行だって、並んで寝ただろ。考えてみたら、子どもの頃はよく一緒に寝たし、問題ない」
「そっか。そうだよね。瑛理が私相手に変な気を起こすわけないか」

牽制された気はするが、今はダブルベッドを取る。そこからは追々だ。

「じゃあ、このダブルでいいな。造りも頑丈だし、マットレスもしっかりしてる。うちの実家もこのメーカーだから、寝心地は保証済み」

さりげなくこの場で一番高級なダブルベッドを選び、柊子に迷う隙を与えないように笑顔で言った。

「よし、あとはシーツやカーテンなんかを選ぼう」
「うん……」

まだ困惑気味の柊子を引っ張って残りの買い物を済ませた。
今日の予定の買い物を一通り終えると、すっかり昼時を過ぎていた。