「瑛理、来てくれたのか」
「瑛理くん、いらっしゃい」
家族が向かえる居間に瑛理は笑顔で入っていく。
「お邪魔します。邦親さんお帰りなさい」
「忙しくて来られないと聞いていたからさ。時間を作ってきてくれたんだろう? ありがとう」
兄の言葉に瑛理は弟っぽい人懐っこい笑顔を見せる。本当にびっくりするくらい外面の良い男である。
「いえいえ、邦親さんと話したかったんで。あ、もちろんお義父さんとも」
「おいおい、俺はついでか?」
父がおどけた顔をして、私以外の全員が笑った。仲の良い古賀家に、瑛理はちゃんと順応している。昔からの付き合いだし、瑛理は相手の懐に入るのがとても上手い。
「柊子にも会いたかったですし」
「そうそう。早くふたりで新居を決めろよ」
兄に言われ、私はびくびくしている。瑛理がなんと返すだろう。別居婚に持ち込んだのは私だ。
「そうですね。でも迷っちゃって。な? 柊子」
話を振られ、慌てて頷いた。瑛理がにこやかに続ける。
「ほら、子どもが産まれたら、お義母さんやうちの母が遊びに来やすいところがいいでしょう? それで柊子と悩んでるんです」
子ども! 私は思いもかけない瑛理の返しにひとりで狼狽した。離婚前提の私たちには、嘘八百もいいところだ。
「それ、親に子育てを手伝わせる気満々な発言に聞こえるぞ」
兄が笑い、瑛理も声をあげて笑った。
「だって、古賀家にも志筑家にも初孫ですよ。両方の家に近くて、評判のいい保育園があって、小学校までの道のりが安全で……」
「と、ともかく、私も瑛理も色々考えて悩んでるの! もう少し待ってね?」
瑛理の調子のいい発言を止めたくて、割り込むように言った。両親も祖母もそれなら仕方ないと納得した顔をしていたけれど、私は背中に汗をかくほど焦っていたし、瑛理は私の様子を面白そうに見ていた。意地悪!
「瑛理くん、いらっしゃい」
家族が向かえる居間に瑛理は笑顔で入っていく。
「お邪魔します。邦親さんお帰りなさい」
「忙しくて来られないと聞いていたからさ。時間を作ってきてくれたんだろう? ありがとう」
兄の言葉に瑛理は弟っぽい人懐っこい笑顔を見せる。本当にびっくりするくらい外面の良い男である。
「いえいえ、邦親さんと話したかったんで。あ、もちろんお義父さんとも」
「おいおい、俺はついでか?」
父がおどけた顔をして、私以外の全員が笑った。仲の良い古賀家に、瑛理はちゃんと順応している。昔からの付き合いだし、瑛理は相手の懐に入るのがとても上手い。
「柊子にも会いたかったですし」
「そうそう。早くふたりで新居を決めろよ」
兄に言われ、私はびくびくしている。瑛理がなんと返すだろう。別居婚に持ち込んだのは私だ。
「そうですね。でも迷っちゃって。な? 柊子」
話を振られ、慌てて頷いた。瑛理がにこやかに続ける。
「ほら、子どもが産まれたら、お義母さんやうちの母が遊びに来やすいところがいいでしょう? それで柊子と悩んでるんです」
子ども! 私は思いもかけない瑛理の返しにひとりで狼狽した。離婚前提の私たちには、嘘八百もいいところだ。
「それ、親に子育てを手伝わせる気満々な発言に聞こえるぞ」
兄が笑い、瑛理も声をあげて笑った。
「だって、古賀家にも志筑家にも初孫ですよ。両方の家に近くて、評判のいい保育園があって、小学校までの道のりが安全で……」
「と、ともかく、私も瑛理も色々考えて悩んでるの! もう少し待ってね?」
瑛理の調子のいい発言を止めたくて、割り込むように言った。両親も祖母もそれなら仕方ないと納得した顔をしていたけれど、私は背中に汗をかくほど焦っていたし、瑛理は私の様子を面白そうに見ていた。意地悪!



