離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる

それから俺は急ピッチで同居の準備をスタートさせた。まず姉と名義変更のやりとりをし、平行して両親と兄に話す。柊子の家にも行って、引っ越し日を具体的に決めた。
想像通り、双方の家族は喜んだ。

「柊子ものんびりしているから心配していたけど、瑛理が考えていてくれてよかったよ」

古賀家のリビングで向かい合い、邦親さんが笑顔で言った。もとは邦親さんと姉が住む予定だったマンションが空いていたので事がスムーズだったのだ。俺はひそかに邦親さんにも感謝した。

「ねえ、兄さん。ちょうどいいし」

柊子がちょいちょいと邦親さんの腕をつつく。邦親さんがああとうなずき、その場にそろった家族に向かって言った。

「柊子も結婚して家を出るし、ちょうどいいかなと思って言うんだけど。結婚したい人がいるんだ」

柊子の両親と祖母が明るい表情になる。

「少し年上の女性で、実は結構長く付き合ってる。柊子と瑛理が落ち着いたら、父さんたちに紹介しようと思っていたんだ。今度連れてきてもいいかな」
「もちろんだよ。日にちを決めよう」
「写真とかないの? 邦親」
「はは、今度本人を連れてくるから待っていてよ」

和やかなムードの古賀家の居間で、俺は愛想笑いをしながら内心青くなっていた。
なんてことだ。
柊子の提示した『兄の結婚』。それが叶ってしまえば、柊子は離婚を主張し始めるだろう。

柊子はおそらく邦親さんから結婚の話を聞いていたのだ。だからこそ、すんなり俺との同居に踏み切ったに違いない。