離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる

食後にふたりで公園をぐるりと回ってマンションに到着した。近くには有名大学がいくつかあり、根津駅が近い。賑わう上野近辺でも池之端は比較的閑静だ。
俺たちのオフィスは日本橋周辺なので通勤は電車になってしまうが、実家から離れるという意味ではいいかもしれない。

部屋は2LDK。室内は最低限の家具が置かれ、掃除も行き届いていた。
俺も入ったのは久しぶりだ。祖父が亡くなってから、学生時代に大学が近かった姉がこの部屋をよく使っていたのは知っている。義兄と結婚してからは使っていないのだろう。

「家具は使っていいって言われてるけど、古いから買い替えてもいいな」
「そうだね。ダイニングテーブルとかはそのままでもいいかもしれないけど、ベッドはふたついるし、チェストとかも買い足したいかな」
「近いうちに買い物に行こう」
「うん、日用雑貨とかは引っ越し日が決まってからがいいよね」

冷静に話しているけれど、俺はずっと浮かれている。すごく新婚らしい会話をしているし、手続きを終え、家具がそろえばいつでも柊子と同居が開始できるのだ。

「柊子、改めてよろしくな」

あくまでさりげなく言う。下心など微塵も見せるものか。

「仲良くやっていこう」
「うん。瑛理が意地悪言わなければ、仲良くできると思うけど」

唇を尖らせる柊子を可愛いと思った。