離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる

そうと決まれば話は早い。俺は早速柊子にこの件を連絡した。
まずはメッセージアプリで送る。

【家族に同居を急かされている】
【姉貴がマンションを譲る手筈を整えてしまった】

返信はすぐにきた。

【どういうこと?】

俺は得意満面で返信した。

【会って話せるか?】

柊子を呼び出したのは、マンションのある上野だ。
老舗の洋食屋で待ち合わせ、夕食を取りながら俺は困り果てた顔を作った。

「というわけで、姉貴が勝手に手配してしまって。家族も乗り気なんだよ」

俺の説明は少々盛ったものだ。しかし、素直な柊子はすっかり信じ、困惑げにため息をつく。

「同居は避けられないって感じなのね」
「柊子が嫌なのはわかる。俺と離婚したいんだもんな」

俺はあくまで理解を示した態度を取る。

「だけど、その離婚が今日明日にでもじゃないってことは俺もおまえも意見が一致してるよな」
「うん。少なくともうちの兄の結婚が決まるくらいまでは……」
「それなら、今は仲良くやっているように見せかけた方がいいだろう。ここまでお膳立てされて同居を断ったら、さすがに不仲を疑われるぞ」
「うう」

本当に柊子は単純だ。俺の思う通りの反応をする。
このチョロい女をどうして俺はいつまでたってもものにできないんだろう。

「同居っていっても寝室は分けて、ルームシェアみたいに暮らせば、柊子も気が楽じゃないか?」
「それは……助かるけど、瑛理はいいの?」