「でも、姉貴。あのマンションは、ゆくゆくは日本を拠点にしたとき、礼義兄さんと住むんだろ?」
『いいえ。その時は礼のご実家をもらい受けることになるわ。彼、ひとりっ子だもの』
「マンションは資産になるし、立地もいいんだから、今使っていないなら賃貸にしたらどう?」
『別にお金に困っているわけじゃないから。私も礼も、ふたりで生きていくだけお金があればいいのよ。あのマンションは可愛い弟夫妻にあげるの。きっと柊子ちゃんは喜んでくれるわ』
駄目だ。姉の中では決定事項だ。こうなると、姉はほとんど話を聞かない。
……いや、待てよ。俺は考える。
姉が無理強いしてマンションを押し付けてきた。これは柊子を同居に誘う口実になる。
頑なな柊子もここまで準備されて、同居を断り続けることはできないだろう。彼女が離婚をすぐにしない理由が家族の手前だからだ。
同居してしまえばこっちのものだ。距離を縮めて、男女の仲になってしまえばいい。
一度でも関係を持てば、お人好しで根が単純な柊子のことだ。きっと俺に情が湧いて切り捨てられなくなる。そうこうしているうちに柊子が俺の子を妊娠すれば。
『瑛理?』
姉に呼ばれ、俺は悪だくみからはっと覚めた。
「なに、聞いてるよ」
『マンションの件、進めてOKでしょう』
「ああ」
俺は力強く答えた。
「姉貴がそう言うなら遠慮なく頂戴するよ。ありがとう」
『いいえ。その時は礼のご実家をもらい受けることになるわ。彼、ひとりっ子だもの』
「マンションは資産になるし、立地もいいんだから、今使っていないなら賃貸にしたらどう?」
『別にお金に困っているわけじゃないから。私も礼も、ふたりで生きていくだけお金があればいいのよ。あのマンションは可愛い弟夫妻にあげるの。きっと柊子ちゃんは喜んでくれるわ』
駄目だ。姉の中では決定事項だ。こうなると、姉はほとんど話を聞かない。
……いや、待てよ。俺は考える。
姉が無理強いしてマンションを押し付けてきた。これは柊子を同居に誘う口実になる。
頑なな柊子もここまで準備されて、同居を断り続けることはできないだろう。彼女が離婚をすぐにしない理由が家族の手前だからだ。
同居してしまえばこっちのものだ。距離を縮めて、男女の仲になってしまえばいい。
一度でも関係を持てば、お人好しで根が単純な柊子のことだ。きっと俺に情が湧いて切り捨てられなくなる。そうこうしているうちに柊子が俺の子を妊娠すれば。
『瑛理?』
姉に呼ばれ、俺は悪だくみからはっと覚めた。
「なに、聞いてるよ」
『マンションの件、進めてOKでしょう』
「ああ」
俺は力強く答えた。
「姉貴がそう言うなら遠慮なく頂戴するよ。ありがとう」



