ここで私が『私は瑛理のことが好きだから、好いてくれないなら、一緒にいたくない』と言ったらどうするのだろう。きっと、瑛理はものすごく困って、離婚に応じると思う。
だって、私のことを『楽な存在』だとみなしている瑛理としては、私が好意を持ちだしたら重たいはずだもの。
「柊子は結婚に夢を見すぎだ」
瑛理が言った。
「恋愛結婚が至上ってわけでもないだろ。昔は見合い結婚が普通だったし、今だってマッチングアプリで出会うのは普通。お互いよく知らないままに付き合うカップルもたくさんいる。条件が合えば、熱烈に好きじゃなくたって結婚する。個人のライフスタイルや働き方を重視して、恋愛に価値を置かない。そんな生き方もあっていいだろ」
「私たちの結婚もそうだっていうの?」
「違うのか? 親が喜ぶ、家は安泰。さらにお互い気ごころも知れていて、それなりに仲良くできる。柊子、俺で手を打っておけよ。俺はおまえでいいし、おまえも……」
「私はそういうの、嫌」
瑛理の言葉をさえぎって、私は言った。悲しい気持ちだった。
「瑛理はバカにするかもしれないけど、私は好きな人と結婚したいの。親の手前、兄さんたちの手前、言われるままに瑛理と結婚はした。でも、一生をかけるなら好きな人とありたい。未来は選びたい」
瑛理が黙った。その沈黙は重たく、私もうつむいて押し黙る。
喧嘩をしたくなかったけれど、どうしてもこの不一致は言わなければならないだろう。
やがて、瑛理がこちらに顔を向け、私もそろりと瑛理の顔を見る。
瑛理はなんともいえない顔をしていた。困っているようにも、あきれているようにも見えた。少しだけ悲しそうにも見えたのは気のせいだろうか。
「もう今日のところはやめておこう」
だって、私のことを『楽な存在』だとみなしている瑛理としては、私が好意を持ちだしたら重たいはずだもの。
「柊子は結婚に夢を見すぎだ」
瑛理が言った。
「恋愛結婚が至上ってわけでもないだろ。昔は見合い結婚が普通だったし、今だってマッチングアプリで出会うのは普通。お互いよく知らないままに付き合うカップルもたくさんいる。条件が合えば、熱烈に好きじゃなくたって結婚する。個人のライフスタイルや働き方を重視して、恋愛に価値を置かない。そんな生き方もあっていいだろ」
「私たちの結婚もそうだっていうの?」
「違うのか? 親が喜ぶ、家は安泰。さらにお互い気ごころも知れていて、それなりに仲良くできる。柊子、俺で手を打っておけよ。俺はおまえでいいし、おまえも……」
「私はそういうの、嫌」
瑛理の言葉をさえぎって、私は言った。悲しい気持ちだった。
「瑛理はバカにするかもしれないけど、私は好きな人と結婚したいの。親の手前、兄さんたちの手前、言われるままに瑛理と結婚はした。でも、一生をかけるなら好きな人とありたい。未来は選びたい」
瑛理が黙った。その沈黙は重たく、私もうつむいて押し黙る。
喧嘩をしたくなかったけれど、どうしてもこの不一致は言わなければならないだろう。
やがて、瑛理がこちらに顔を向け、私もそろりと瑛理の顔を見る。
瑛理はなんともいえない顔をしていた。困っているようにも、あきれているようにも見えた。少しだけ悲しそうにも見えたのは気のせいだろうか。
「もう今日のところはやめておこう」



