いつも通り言い合っていると女将さんが現れ、挨拶や部屋の案内をしてくれた。さすがに私も瑛理もおとなしくなる。食事も部屋に運ばれてくるそうだ。お布団も先に敷いてくれるというのは新婚さんへの気遣いだろうか……。
「外出てみよう」
瑛理に言われるままに外用のサンダルをひっかけ、庭園に出てみる。その近く仕切りを設置した露天風呂もある。
「お庭、綺麗だね」
整えられた庭園は紅葉などが植わっていて、今は伸び始めた緑の葉が美しい。ここまでくるときも思ったけれど、旅行をするにはとてもいい時期だったなと感じる。
柵の向こうを見ると、沢の流れる渓谷が見えた。
「徐々に新緑が芽吹いてるって頃だね。沢の水、冷たいんだろうな」
「危ないから身を乗り出すなよ」
「牧場でも思ったけど、空が広いね」
「遮るものがないからな」
ふたりでしばし黙る。話し合いをするなら今だろう。
私が言葉にする前に、瑛理が口を開く。
「柊子、何度も言うが、俺は離婚する気はない」
「なんで……」
私は瑛理の横顔を見つめる。大事な話なのにこちらを見てもくれない。いつもの瑛理だ。
「私のこと、好きになれないでしょう? 恋愛は生まれない。それなら夫婦でいないほうがいいよ」
「柊子のことは嫌いじゃない。だから、この先も一緒にいる」
「私といるのが楽だから?」
「ああ」
都合のいい道具みたい。
そんな心の通わないことを言われて、私はどうしたらいいのよ。
「外出てみよう」
瑛理に言われるままに外用のサンダルをひっかけ、庭園に出てみる。その近く仕切りを設置した露天風呂もある。
「お庭、綺麗だね」
整えられた庭園は紅葉などが植わっていて、今は伸び始めた緑の葉が美しい。ここまでくるときも思ったけれど、旅行をするにはとてもいい時期だったなと感じる。
柵の向こうを見ると、沢の流れる渓谷が見えた。
「徐々に新緑が芽吹いてるって頃だね。沢の水、冷たいんだろうな」
「危ないから身を乗り出すなよ」
「牧場でも思ったけど、空が広いね」
「遮るものがないからな」
ふたりでしばし黙る。話し合いをするなら今だろう。
私が言葉にする前に、瑛理が口を開く。
「柊子、何度も言うが、俺は離婚する気はない」
「なんで……」
私は瑛理の横顔を見つめる。大事な話なのにこちらを見てもくれない。いつもの瑛理だ。
「私のこと、好きになれないでしょう? 恋愛は生まれない。それなら夫婦でいないほうがいいよ」
「柊子のことは嫌いじゃない。だから、この先も一緒にいる」
「私といるのが楽だから?」
「ああ」
都合のいい道具みたい。
そんな心の通わないことを言われて、私はどうしたらいいのよ。



