離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる

「瑛理は柊子ちゃんが大好きだったから。つい意地悪しちゃったんだよ」
「ばあちゃん!」
「家でよく言ってたよ。『柊子としゃべりたかったのに、姉ちゃんとばっかり遊んでるから面白くなかった』とか『僕の方を見てほしくて髪の毛を引っ張っちゃった』とか」

そんな可愛いことを言う瑛理が存在するのかしら。確かに美優さんと遊んでいるときに、よく絡まれた気はするけれど。
いいや、きっと瑛理のことだ。
ご両親に私をいじめた理由を聞かれて、その場で調子を合わせてそんなことを言ったのだろう。瑛理ならやりかねない。

「親に叱られそうになって言い訳で言っただけだよ」

答え合わせになる言葉を瑛理が言い、私はやっぱりねとうなずく。
頭の回転が速いのとイコールでずるがしこいところのある子どもだったもの、瑛理は。

「でも、今は仲良く夫婦になったじゃないか」

どんな顔をしていいかわからない。大好きなおばあちゃまに私は嘘をつくことになってしまう。
すると瑛理が横から言った。

「まあ、大人になったから。柊子とは楽しい家庭を築いていきたいと思ってるよ」

瑛理は本当に軽くこういうことを言えてしまう。そこが私と違う。器用で、ためらいがない。
私はどうしても引っかかってしまう。大事な人に嘘をつくことが。家族にだっていやだ。まして、わざわざ嘘をつきにお祖母さんに会いに来てしまったことに今更ながら後悔していた。

「ばあちゃんにひ孫の顔を見せられるように頑張るから、長生きしてくれよ」

まだそんなことを笑顔で付け加えられる瑛理に、胸がざわざわした。