「瑛理、外面良過ぎだもんね。普段から無意識に取り繕ってる。疲れちゃうんだよ」
「これが俺のスタイルだからいいんだよ。でかい会社の次男なんだ。愛想よく、調子よく、空気を読んでうまく立ち回る。それが俺の役目」
簡単に言うけれど、瑛理がそういった裏方的な努力をしているのはすべてお父さんや誠さんのため。瑛理は実際かなり家族思いだと思う。
「だから、気を遣わなくていい柊子は、俺にはちょうどいい嫁さんだよ」
ちょうどいい。私はその言葉にうつむいた。
なんとも打算的で合理的で瑛理らしい。恋や愛じゃないスタイルで結婚を見ているのだろう。それこそ家のためでいいのだ。自分が楽ならいいのだ。
だけど、私は寂しい。
女として見られない心地よさがある一方で、恋をしている女の私は瑛理に求められたいと感じている。
「私はそういう考え方に付き合わないから」
つんと言って、ソフトクリームの残りを口に押し込んだ。冷たくて甘くて、頭がちょっと痛かった。
瑛理の祖母の家は牧場から車で三十分ほどの距離だった。山間の集落の一軒で、広い平屋だ。
「もともとばあちゃんの兄夫婦が住んでいた家なんだけど、十年くらい前に建て直したんだ」
門前の空き地に車を停めて、瑛理が見上げる。
「おばあちゃま、ひとり暮らしなんでしょう」
「そっちのでかい家が兄夫妻の娘家族が住んでて、いろいろ世話を焼いてもらってるそうだ。あとでそこにも挨拶に行くぞ」
「う、うん」
結婚式で瑛理の親戚にはたくさん会ったし、挨拶したけれど、こうして訪ねていくとなると『結婚したんだなあ』と実感する。
「これが俺のスタイルだからいいんだよ。でかい会社の次男なんだ。愛想よく、調子よく、空気を読んでうまく立ち回る。それが俺の役目」
簡単に言うけれど、瑛理がそういった裏方的な努力をしているのはすべてお父さんや誠さんのため。瑛理は実際かなり家族思いだと思う。
「だから、気を遣わなくていい柊子は、俺にはちょうどいい嫁さんだよ」
ちょうどいい。私はその言葉にうつむいた。
なんとも打算的で合理的で瑛理らしい。恋や愛じゃないスタイルで結婚を見ているのだろう。それこそ家のためでいいのだ。自分が楽ならいいのだ。
だけど、私は寂しい。
女として見られない心地よさがある一方で、恋をしている女の私は瑛理に求められたいと感じている。
「私はそういう考え方に付き合わないから」
つんと言って、ソフトクリームの残りを口に押し込んだ。冷たくて甘くて、頭がちょっと痛かった。
瑛理の祖母の家は牧場から車で三十分ほどの距離だった。山間の集落の一軒で、広い平屋だ。
「もともとばあちゃんの兄夫婦が住んでいた家なんだけど、十年くらい前に建て直したんだ」
門前の空き地に車を停めて、瑛理が見上げる。
「おばあちゃま、ひとり暮らしなんでしょう」
「そっちのでかい家が兄夫妻の娘家族が住んでて、いろいろ世話を焼いてもらってるそうだ。あとでそこにも挨拶に行くぞ」
「う、うん」
結婚式で瑛理の親戚にはたくさん会ったし、挨拶したけれど、こうして訪ねていくとなると『結婚したんだなあ』と実感する。



