離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる

なんでそんなに優しいことを言ってくれるのかと、疑わしかったけれど、『もし志筑と駄目になったら、俺にチャンスがくるもん。ちゃんと下心をもって相談に乗ってるよ』と清々しい下心宣言までもらった。

瑛理は河東くんがチャラそうに見えて嫌いなんだろうけれど、私は彼が優しい人なのも覚えている。
彼はたぶん、友情で私を助けてくれている。
今回も、『ふたりで旅行なんて大チャンスじゃん。押し倒しちゃえ!』という女子みたいなアドバイスがきた。
下心とか言って、河東くんは私の恋を成就させようとしているのだから面白い。
私としては、瑛理に好きになってもらえそうもないのに、ふたりきりなんて困る。うっかり身体をつないでしまったら、それこそ悲しいだけ。

河東くんに協力してもらって、「この人が好きになったから別れて」なんていう手段も考えた。だけど、彼自身が嫌いな瑛理は絶対喧嘩を仕掛ける。そんなふうに河東くんを巻き込むわけにはいかない。

ともかく、河東くんとの会話やつながりは、極力瑛理に見せない方がいいだろう。やましいことはないけれど、私の恋心をさらすことになってしまう。

そのとき、瑛理のスマホが同じく振動した。
瑛理はにやっと笑って、私にトーク画面を見せてくる。相手は♡しえ♡、自撮り写真がアイコンだ。

『福島のお土産、楽しみにしてます』
『きれいな景色は写真で送ってくださいね』

あの水平さんという女の子からの親密メッセージじゃない。私はじろっと瑛理をにらむ。