離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる

翌週土曜日の朝、東京駅で私たちは待ち合わせた。ここから東北新幹線に乗る。

「新幹線を降りたらレンタカーで移動。車で二時間以上かかるところだから」
「結構遠いね」

座席でコーヒーを飲みながら行き先の住所をマップで確認する。見たところ、かなり山深い土地のようだ。

「ねえ、山道みたいだけど、運転大丈夫?」
「どうだろうな」

瑛理はタブレット端末で新聞を読んでいる。ちょっとちょっと、その反応、心配なんですけど。私の表情を見て取ったのか、瑛理がため息交じりで答える。

「営業部の平社員なんでね。たまに東京郊外や埼玉の山間の地域に社用車で行くこともあるんだよ。それほど心配しなくていい」
「ああ、そう。ならいいんだ」
「柊子には運転させない。おまえ、雑だから怖い」
「わ、私、運転上手いわよ!?」

まあ、それはあくまで都内の道なので、山道は自信がない。だから、瑛理が運転してくれるならすごく助かるのだけれど。
大宮駅を過ぎたところでメッセージアプリに連絡が入った。画面に表示された名前が見えたのだろう。瑛理が渋い顔をする。

「おまえ、河東と連絡とり合ってんの?」

私はぎくりと肩を揺らし、瑛理をそろっと見やる。

「うん、……っていうか、高校時代から連絡先はお互い知ってるし。この前の同窓会であまり話せなかったからって、連絡が……」
「ふうん」

瑛理は明らかに不機嫌な顔。ううん、困ったな。

「俺は、河東とは付き合うなって言ってるよな」
「だから、友達だって言ってるでしょ。変なこと話してないし、トークルームを見せたっていいよ」

そう言いながら、実は見られたらとても困ることになると戦々恐々。