「じゃあ、彼女に伝えた方がいいよ。私を参考にするのはやめたほうがいいって」
「なんでだ?」
「瑛理の好みは私じゃないもの。私に雰囲気似せても瑛理は落とせないよ」
私の言葉に瑛理が不機嫌そうに唇をとがらせた。
「別に好みじゃないとは言ってないだろ。っていうか、おまえさ、俺が他の女に言い寄られてるのを見てなんとも思わないのかよ」
「思うわけないじゃん。こっちは離婚したいって言ってるんだから」
などと言ってはみたものの、本音はめちゃくちゃ気にしていた。
瑛理が私を好きにならないだろうことはわかっていても、やっぱり目の前で誰かと幸せになるのを見るのはつらい。
でもそのくらいしないと私の情けない恋心は消えてくれない気もする。
「浮気とか慰謝料請求とか言わないから、いいひとが見つかったら、その人と愛を育んで幸せになってね。私は喜んで離婚するから」
「おまえの言い草、本当にムカつくな」
瑛理はレストランにつくまでむっつりと黙り込んでしまった。
平日のイタリアンは客席が半分埋まった程度。ピアノの生演奏のあるお店で、聴き入っているだけで時間が過ぎる。瑛理が多少不機嫌でも問題ないわとワイングラスに唇をつけた。
注文しておいたコースの前菜が運ばれてくると、ようやく瑛理が口を開いた。
「今日の本題。来週の土日、空けてほしい」
そうだ。用事があると呼び出されていたのだ。それにしても来週末とは急である。
「なに? 空いてるけど」
「うちの祖母に会いにいく。福島県だ」
「なんでだ?」
「瑛理の好みは私じゃないもの。私に雰囲気似せても瑛理は落とせないよ」
私の言葉に瑛理が不機嫌そうに唇をとがらせた。
「別に好みじゃないとは言ってないだろ。っていうか、おまえさ、俺が他の女に言い寄られてるのを見てなんとも思わないのかよ」
「思うわけないじゃん。こっちは離婚したいって言ってるんだから」
などと言ってはみたものの、本音はめちゃくちゃ気にしていた。
瑛理が私を好きにならないだろうことはわかっていても、やっぱり目の前で誰かと幸せになるのを見るのはつらい。
でもそのくらいしないと私の情けない恋心は消えてくれない気もする。
「浮気とか慰謝料請求とか言わないから、いいひとが見つかったら、その人と愛を育んで幸せになってね。私は喜んで離婚するから」
「おまえの言い草、本当にムカつくな」
瑛理はレストランにつくまでむっつりと黙り込んでしまった。
平日のイタリアンは客席が半分埋まった程度。ピアノの生演奏のあるお店で、聴き入っているだけで時間が過ぎる。瑛理が多少不機嫌でも問題ないわとワイングラスに唇をつけた。
注文しておいたコースの前菜が運ばれてくると、ようやく瑛理が口を開いた。
「今日の本題。来週の土日、空けてほしい」
そうだ。用事があると呼び出されていたのだ。それにしても来週末とは急である。
「なに? 空いてるけど」
「うちの祖母に会いにいく。福島県だ」



