志筑瑛理のいる営業二課に配属になったのは幸運だった。そこで私は初めて彼を見た。
正直、顔は期待していなかった。御曹司ならなんでもいいや、そんな感じ。
予想を裏切り、志筑瑛理はすごく素敵な男性だった。
背が高く、整った顔立ち。少しだけ目が吊り上がっているところが猫みたいで、愛嬌があった。さらに笑うと可愛いのだ。
『水平、わかんないことあったら聞いてくれよ』
気さくに話しかけてくれる。頼りになって優しくて朗らかで。これは絶対にものにしなければならない。こんなにいい条件の男性は他にいないだろう。
しかし、社内の女子社員はこの好条件の御曹司を狙っている様子がない。
理由はすぐにわかった。婚約者がいるのだ。しかも子どものころに親同士が決めた許嫁だという。
古賀柊子という古賀製薬の令嬢は、その事実を知ってすぐに先輩にねだって写真を見せてもらった。肩までの黒髪の清純そうな女性だ。
さらに、志筑先輩と会社の近くで待ち合わせをしているところも見かけた。
ふたりは婚約者同士には見えなかった。淡泊で、互いを見る目に情熱もない。並んで歩く距離も遠く、どう見ても一線を超えた男女には見えなかった。それはふたりが結婚しても変わらなかった。
まだチャンスがあるかも……そう思って色々画策したのに、結局全部裏目に出てしまったみたい。
志筑夫妻はお互いの気持ちを通じ合わせ、気づけば端から見て恥ずかしいほどのおしどり夫婦になってしまった。
私のお邪魔は、ふたりの結びつきを強めたことになるんだろうな。あー、いっそ功労者としてねぎらってほしいくらいだわ。
……ううん、それはそれでムカつくから、やっぱりいいや。
正直、顔は期待していなかった。御曹司ならなんでもいいや、そんな感じ。
予想を裏切り、志筑瑛理はすごく素敵な男性だった。
背が高く、整った顔立ち。少しだけ目が吊り上がっているところが猫みたいで、愛嬌があった。さらに笑うと可愛いのだ。
『水平、わかんないことあったら聞いてくれよ』
気さくに話しかけてくれる。頼りになって優しくて朗らかで。これは絶対にものにしなければならない。こんなにいい条件の男性は他にいないだろう。
しかし、社内の女子社員はこの好条件の御曹司を狙っている様子がない。
理由はすぐにわかった。婚約者がいるのだ。しかも子どものころに親同士が決めた許嫁だという。
古賀柊子という古賀製薬の令嬢は、その事実を知ってすぐに先輩にねだって写真を見せてもらった。肩までの黒髪の清純そうな女性だ。
さらに、志筑先輩と会社の近くで待ち合わせをしているところも見かけた。
ふたりは婚約者同士には見えなかった。淡泊で、互いを見る目に情熱もない。並んで歩く距離も遠く、どう見ても一線を超えた男女には見えなかった。それはふたりが結婚しても変わらなかった。
まだチャンスがあるかも……そう思って色々画策したのに、結局全部裏目に出てしまったみたい。
志筑夫妻はお互いの気持ちを通じ合わせ、気づけば端から見て恥ずかしいほどのおしどり夫婦になってしまった。
私のお邪魔は、ふたりの結びつきを強めたことになるんだろうな。あー、いっそ功労者としてねぎらってほしいくらいだわ。
……ううん、それはそれでムカつくから、やっぱりいいや。



