怒り狂いながらも、今までの投資を台無しにしたくない父は、私に残りの日程で大学をいくつか受けさせた。
合格したのは数ランク下の某大学。

入学までの間に私は髪を染め、貯めたお小遣いで服を買いに行った。
動画でメイクを研究して、可愛い笑顔や話し方を勉強した。そして全力で大学デビューを果たしたのだ。
見た目と話し方を変えれば、男子も女子も寄ってくる。
父はがらりと様子を変えた私を汚いものでも見るかのように扱ったけれど、成績トップをキープしている以上は何も言えないようだった。

私は大学時代、周囲に華やかな友人たちを侍らせ女王のように過ごした。
クラブで遊んだり、旅行に出かけたり。飲み会にも進んで参加した。彼氏だって切らしたことがない。
いい気分だった。自分の力で手に入れた世界が誇らしかった。

総合商社のしづき株式会社に就職が決まったときも、一流企業の内定にみんなが私を羨んだ。
内定式のあとに同期から面白い噂を聞いた。ひとつ上の代にしづきの社長令息がいると。
これはチャンスだ。

私には夢があった。お金持ちと結婚することだ。
それは学歴で身を立て、自身の才覚でのし上がってほしいと願う父への復讐心からである。
私は若さと愛らしさだけで、男を捕まえる。父が投資して磨いてきた私の頭脳なんか使ってやるものか。女を武器に将来を決めてやろう。
私の女の部分を嫌悪する父に対する最高の復讐になる。しづきの社長令息なんて、まさにうってつけの相手！