「今日は一日楽しみたいところだけど、瑛理の足もあるし、途中でホテルで休憩しようね」
「ああ、夜のパレードに合わせて再入園するんだろ」
「そうそう。私もちょっとお昼寝したいし」
「なあ、柊子」

瑛理がふと立ち止まった。先を歩いていた私は振り向く。

近くでは兵隊の格好のキャストスタッフがホルンやトランペットで陽気な音楽を奏でていた。人々のはしゃいだ声、キラキラ注ぐ陽光。

瑛理の綺麗な目が私を射抜いていた。

「なあに、瑛理。どうしたの?」
「妊娠、してるのか?」

驚いて一瞬言葉が出なかった。
それは私が今日、夜のパレードを見ながら伝えようと思っていたとっておきの秘密だったから。
お腹に赤ちゃんがいる。瑛理と私の赤ちゃんだ。
私は溢れる笑みを隠し切れずに言った。

「もうちょっとで三ヶ月だって。今夜、大々的に発表するつもりだったのに、瑛理は鋭いなあ」

瑛理がは~と深い息をつき、頭をかかえてその場にうずくまった。

「早く言えよ、柊子!」
「わかったのが一昨日なんだもの。どうせならドラマティックに言いたいなあって」
「ジェットコースターは乗らないとか、昼寝とか。変だなって思ったんだよ。あと考えてみたら、ここ二、三日、アルコールもコーヒー、紅茶も飲んでない。ああ、そういうことか!」

私は瑛理の横にかがみ、その表情が見たくてのぞき込んだ。可愛いなあと笑いながら。