瑛理の左足のギブスは三週間目で外れた。
サポーターでの固定と通院は続き、しばらくはリハビリもしないといけないけれど、ひとまず通常の生活が戻ってきた。
十月、私たちは誕生日祝いを兼ねて、近場だけれどテーマパークに遊びに来ていた。併設のホテルにも予約を入れてあるので、朝から晩まで遊べる。
カップルが好みそうなこういったデートも、私たちには初体験。すごく新鮮だ。大勢の客の波に押されながら入園するのも、すでにちょっと楽しい。
「ジェットコースターは、今日は避けたいなあ」
私の言葉に瑛理が振り向いた。
「意外だな。柊子、絶叫マシン系大好きかと思った」
「今日は気分じゃないんだよね~。あ、でもこれとこれは乗りたい」
スマホでアトラクションを指し示す。液晶をのぞき込んで瑛理がうなずいた。
「わかった。新しいアトラクションで人気だから、アプリでパスを取らないとな」
そう言って手早くアトラクションの予約を取ってくれる。私は瑛理の隣でにこにこしながら、あたりを見回した。
「ポップコーンも食べたーい。ワゴン、どこかなあ」
「俺、チョコレート味のがいい」
「私、キャラメル。あと、食べたい限定メニューがたくさんあるの。全部付き合ってね。並んでも食べるから」
「わかったよ。食い意地が張ってるな、柊子は」
ふたりでそんなことを言い合いながら、開けた広場を歩く。嬉しくて繋いだ手を引っ張ると、瑛理が優しく手を握り返してついてきてくれる。そんな些細な仕草がものすごく嬉しい。



