河東くんは私の前にコーヒーを置いてくれる。コーヒーメーカーで落としたものだ。
「そんな顔させるヤツに、やっぱり譲りたくないなあ」
「え?」
顔をあげると、向かいに座った河東くんが真剣な目で私を見ていた。
「志筑は柊子ちゃんの優しさに胡坐をかいているように見えるよ。俺だったら、柊子ちゃんにそんな態度取らない。何があっても」
「河東くん」
「柊子ちゃん、今からでも遅くないよ。俺にしといたら?」
河東くんは冗談で言っていない。本気で私を口説こうとしている。ここまで優しくしてくれた人。一度は身を引くと言った彼が、再度私に告白をしてくれている。
河東くんは本当にいい人だ。彼と付き合う女性は幸せだろう。
だからこそ、私は勢いよく頭を下げた。
「ごめんなさい。それでも私は瑛理が好き」
こじれても、邪魔に思われても、それでも彼が好きなのだ。ずっとずっと、何年も抱え続けてきた思いは変わらない。私たちの関係が変化しても、気持ちはいや増すばかりで消えることなんてない。
「瑛理、昔からちょっと子どもっぽいところがあって、そういうところは私にしか見せない。今の状況も、瑛理なりの甘え方だと思う。外面がよくて誰とでも上手にコミュニケーションを取れる瑛理が、私の前だけ不器用で我儘になる。気持ちが通じ合えた今だからわかる。私、それを嬉しく思ってるんだ」
「柊子ちゃん、甘やかしすぎだよ」
「そうかもしれない。だけど、私の頑固で融通の利かないところを甘やかしてくれるのも瑛理だから。私、瑛理の今の状況を見守る。ちょっと寂しいけど、頑張る。……だから、ごめんね。河東くんの気持ち、本当に嬉しいけど、ごめんね」
河東くんがソファの背もたれに背中を預け、天を仰いだ。ふーと長い溜息が聞こえた。
「そんな顔させるヤツに、やっぱり譲りたくないなあ」
「え?」
顔をあげると、向かいに座った河東くんが真剣な目で私を見ていた。
「志筑は柊子ちゃんの優しさに胡坐をかいているように見えるよ。俺だったら、柊子ちゃんにそんな態度取らない。何があっても」
「河東くん」
「柊子ちゃん、今からでも遅くないよ。俺にしといたら?」
河東くんは冗談で言っていない。本気で私を口説こうとしている。ここまで優しくしてくれた人。一度は身を引くと言った彼が、再度私に告白をしてくれている。
河東くんは本当にいい人だ。彼と付き合う女性は幸せだろう。
だからこそ、私は勢いよく頭を下げた。
「ごめんなさい。それでも私は瑛理が好き」
こじれても、邪魔に思われても、それでも彼が好きなのだ。ずっとずっと、何年も抱え続けてきた思いは変わらない。私たちの関係が変化しても、気持ちはいや増すばかりで消えることなんてない。
「瑛理、昔からちょっと子どもっぽいところがあって、そういうところは私にしか見せない。今の状況も、瑛理なりの甘え方だと思う。外面がよくて誰とでも上手にコミュニケーションを取れる瑛理が、私の前だけ不器用で我儘になる。気持ちが通じ合えた今だからわかる。私、それを嬉しく思ってるんだ」
「柊子ちゃん、甘やかしすぎだよ」
「そうかもしれない。だけど、私の頑固で融通の利かないところを甘やかしてくれるのも瑛理だから。私、瑛理の今の状況を見守る。ちょっと寂しいけど、頑張る。……だから、ごめんね。河東くんの気持ち、本当に嬉しいけど、ごめんね」
河東くんがソファの背もたれに背中を預け、天を仰いだ。ふーと長い溜息が聞こえた。



