「頭と体の打撲はたいしたことがないけど、左足のくるぶしあたりの骨がが剥離骨折だって。靭帯も一部断裂してるってさ」
「ああ、それでギブス」

足にギブスがはまっていることは、今さっき気づいた。剥離骨折ということは折れたというより骨と骨の位置がずれたという感じだろうか。ともかくしばらくはギブス生活だろう。

「ずっと意識なかったって、俺の頭、本当に平気なのかよ」
「意識が戻らないんじゃなくて寝てたみたいだよ、おまえ。過労だろうってさ」

あははと兄が明るく笑う。仮にも弟が怪我で運ばれたというのにこの態度だ。逆に安心してしまう。

兄の手を借り、リクライニングのベッドを起こしてもらう。俺の怪我はともかく今日の出来事について、話を聞かねばならない。兄も心得たもので穏やかな口調で言った。

「結論からいうと、スワドラッグ、サタ運送、しづきの問題は、社長同士のトップ会談でカタをつけることになった。現場の人間がみんな感情的で熱くなってるし、怪我人も出た。三社とも付き合いは長いからね。上が話し合えば丸く収まるよ」
「そんな……」

確かにそれが一番早い。しかし、トップ同士が話し合いの場を設けなければならないほど、現場が関係性をこじらせてしまったこと、そしてそれを収束できなかったことが問題なのだ。
完全に俺の失敗だ。