東京から新幹線で一時間以内で着く海水浴場。約束の週末、俺と柊子はふたりで夏の旅行にやってきていた。お盆を過ぎても、海は盛況だった。
俺が着替えてビーチパラソルやシートを借りている間に、柊子は着替えて貴重品などを預けに行っていた。
「賑わってるね」
その声に振り向くと、白いビキニ姿の柊子がいる俺と選んだ水着をこうして着てみせてくれるのは初めてだ。恥ずかしいのかパーカー型のラッシュガードを羽織っている。
「暑くないか?」
「日焼け防止。まあ、焼けちゃうとは思うけど」
よく似合うからもっとビキニ姿を見たいとは思うが、考えてみたら柊子の身体をこの海岸にいる男たちに見せるのも癪だ。
「じゃあ、さっそく泳ごう。昼食のレストランは遅めに予約してあるし、時間はまだたっぷりある」
「うん。あ、クラゲに気をつけようね」
柊子が手を差し伸べてくれるので俺は迷わずその手を取った。
手を繋いで波打ち際まで急いだ。熱くなった足の裏を冷たい波が濡らす。気持ちよくて、ふたりで歓声をあげてしまった。
海に来たのなんて何年ぶりだろう。柊子とは間違いなく初めてだ。
「よし、今日はめちゃくちゃ泳ぐぞ」
「ええ? プールならともかく、海水でそこまで泳げるかな」
「なんだ、柊子は俺に負けるのが怖いとか?」
中高と体育の成績はトップだった俺と柊子。柊子も負けん気はあるので、俺の挑発に簡単に乗ってくる。
「わかった。瑛理には負けないよ」
「負けた方が罰ゲームにする?」
「瑛理、子どもみたい! 負けないけどね」



