「まさか、こんな夜中に夕飯を食べることになるとは」
日付の変わる頃、私と瑛理はようやく身支度を整え、食卓についていた。約束通り、煮物と味噌汁を温め返してくれたのは瑛理だ。
「誰のせいよ、誰の」
「お互い様だろ」
そう言いながら瑛理はどこかバツが悪そうだ。
確かにお互い様だと思うけど、瑛理には少々反省してほしい。
「私は初めてだったのに。何回もするから」
「な……や、優しくしただろ? あんまり痛くなかったよな?」
「そうだけど、最初からあんなに……容赦なさすぎじゃない?」
言いながら私も頬が熱くなってくるのでそっぽを向いた。ついさっきまでの出来事なので、恥ずかしくてたまらない。
瑛理も思い出しているのか、うつむいてぼそぼそと言う。
「片想い歴何年だと思ってんだ。我慢し続けてきたところ、可愛い嫁さんから『抱いて』っておねだりされて、理性があっただけ褒めてほしい」
「なんで開き直ってるの」
「嬉しかったんだよ。柊子に、全部許してもらえたみたいで」
瑛理の言葉に、思わずじんときてしまった。
私たちはやっぱり結構こじらせていたのだと思う。近すぎて、好きな気持ちを隠しすぎて、上手な関わり方を探って慎重になっていた。



