離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる


「柊子ちゃん、久しぶり」

日曜の昼下がり、私は恵比寿で河東くんと待ち合わせた。彼の自宅とオフィスがこの近くだそうだ。

「河東くん、あらためてありがとう」

私は会うなり頭を下げた。河東くんはいやいやと手を振って言う。

「俺は勝手に世話焼いて失恋しただけだから」
「本当に、ご面倒をおかけしまして。あと私のことも、好きだなんて言ってくれてありがとう」
「志筑に負けて悔しいけどね」

そう言って明るく笑う河東くん。私に気を遣わせないようにしてくれているのが感じられる。本当にすごくいい人だと思う。

私たちは近くのカフェでランチにし、お互いの近況を語り合った。聞き方によってはのろけに聞こえるかもしれない私と瑛理の話を、河東くんは相槌を打ちながらじっくり聞いてくれた。

「柊子ちゃんは何事も一生懸命で真面目で、高校時代はそんなところが人気だったし、俺は好きだったな」

河東くんがしみじみ言う。
「でも、志筑はそんな柊子ちゃんをもっと小さい頃から見つめ続けてきたんだね。なんだか妬けるなあ。俺が志筑の立場だったら、中学時代には告白して恋人同士になってたよ。志筑は、忍耐力あるよね」

忍耐力……。そのせいか、私たち進展が止まっているんだけど……。
駄目だ、こんなこと考えていたら欲求不満みたいじゃない。