私と瑛理、兄の邦親と瑛理の兄姉の誠さんと美優さん。
五人は幼い頃から長い時間をともに過ごしてきた。許嫁だとか結婚だとか、将来のことは子ども時代にまったく関係なかった。ただただ無邪気な幼馴染だった私たち。

上三人に私と瑛理は一生懸命ついていったし、仲間に入れれば嬉しかった。男子女子で別れて遊ぶとき、私は美優さんと一緒に過ごした。勉強熱心で秀才肌の美優さんの言うことは時々難しくてわからなかったけれど、優しいお姉さんは私の憧れだった。瑛理は瑛理で、兄と誠さんにいじられては末っ子根性を発揮して我儘を言ったり甘えてみたり。
私たちは兄弟みたいに親密に育った。

今、五人は大人になって、パートナーを連れてこの場に集まっている。
七月、今日は兄の結婚式である。

「邦親、瑠衣さん、本当におめでとう」

美優さんが感極まった様子でふたりに相対する。夫の礼さんと今朝の飛行機で帰国したばかりだ。

「ありがとう、美優、礼」
「本当にありがとう、美優ちゃん」

ホテルインペリアルオアシス東京の親族控室。燕尾服姿の兄の横にはウエディングドレス姿の妻の瑠衣さん。兄より十歳年上だけれど少女のように清らかで素朴、美しい女性だ。

「ふたりが幸せになってくれて嬉しい」
「泣くなよ、美優」

美優さんは耐えているつもりのようだけど、すでにぽろぽろと頬を雫が伝っている。
兄と美優さんにとって今日は記念すべき日だろう。元婚約者同士のふたりが、ようやくお互いの恋愛を成就させられたのだ。

「美優と礼が背中を押してくれたおかげだよ」

兄が言い、ぼろぼろと涙する美優さんを夫の礼さんが背をさする。その光景に私も涙が出てしまう。思い合っている二組のカップルがとても美しい光景に見えた。