離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる

柊子がこくんとうなずくのを待てずに、俺はその唇にキスをした。
柔らかく重ねるだけじゃ物足りなくて、強引に舌で歯列をこじ開ける。やっとキスできた柊子にこんな乱暴なことをしてはだめだと思いつつ、止まらない。
柊子の身体をきつく抱き寄せ、深く深くキスをする。
柊子がキスの合間に短く息をつくのが、必死過ぎて愛しい。声の混じった吐息も粘膜同士の擦れ合う水音も、柊子のとろけた表情もたまらないほど俺を煽る。止まらなくなりそうだ。

俺は精一杯自分を律し、どうにか唇を離した。
しかし、かなり長い間柊子の唇をむさぼっていた。
キスを終えた柊子はうるんだ瞳ととろんと呆けた表情で、俺の腕にしがみついてようやく立っているような状態だった。

「ごめん、柊子。がっつきすぎた」
「瑛理……なんか変」

柊子が言うなり、力なく俺の胸に倒れ込んできた。

「酸欠……かな。頭ぼーっとする。あと、足の力、入んない」

俺は可愛い妻を抱き寄せ、またしても湧き上がる欲求を必死に耐えた。

「キスで、腰抜かして酸欠とか。おまえ、可愛すぎ」
「だって、初めてなのに。……瑛理がめちゃくちゃするから」

本当はもっとめちゃくちゃにしたい。今すぐベッドに連れ込んで、身体中に刻み付けてやりたい。
だけど、大事にしたいという気持ちを今は優先する。
俺と柊子は始まったばかりなのだ。お互いを尊重して、ゆっくり歩み寄る時間を取りたい。
せめてドキッとさせたくて柊子の耳元でささやいた。

「処女をもらうときは、もっと止まらないかも」
「瑛理のばか」

本当は猛烈に照れている顔を隠したいのだろうし、もっと厳しく俺を叱りたいのだろうけれど、力の入らない柊子は俺の腕の中でおとなしくしていた。

幸せ過ぎてどうにかなりそうな昼下がり。
俺はケーキのことも、新しい業務のこともすっかり忘れて、柊子のあたたかな温度と甘い香りに酔っていた。