帰宅し、玄関のドアを開けるとまずカレーの香りがした。

「おかえりなさい」

先に帰り着き、夕食を作ってくれた柊子が出迎える。エプロンをしている姿を見ただけで、可愛くて息が詰まる。

「ただいま、夕食はカレー?」
「う、うん。なんか初心者メニューでごめん」

柊子は頬を赤くして気まずそうだ。確かに柊子の作るメニューはチャーハンやシチュー、カレーなど比較的初心者にも作りやすいものばかりだ。柊子の母親は料理上手な専業主婦。柊子も手伝うことはあっても、自分ひとりですべて作ることに慣れていないのだろう。
そんな初々しさもいいと俺は思っているのだが。

「俺、カレー大好きなんだよな。どれ、柊子の腕前を見てやろう」
「期待しないでね! 普通に作っただけだから!」

慌てる柊子の横を通り、キッチンで鍋をのぞき込んだ。謙遜しなくてもちゃんと美味しそうに出来上がっている。それに、柊子が作ってくれるものならなんでも嬉しい。

「なあ、俺、ドライカレーも好きなんだ。今度の休み、一緒に作らないか?」
「うん、いいね。私もドライカレー食べたいな」

柊子がぱっと笑う。可愛い。柊子が可愛くて苦しい。俺は抱き寄せたくなる気持ちをぐっとこらえた。

カレーは予想通り美味しくて、お替わりまでして食べた。美味そうに食べる俺を見る柊子の優しい目。こんな顔を見たらいくらでも食べられる。

食後は風呂上りに俺から誘ってゲームをした。思えば小学生から中学生くらいまではお互いの家に行けばゲームなども一緒にしたものだ。ふたりで仲良く遊べる趣味としてゲームというのはなかなかいいかもしれない。