「まだ飯とか誘われてるなら、きっぱり拒絶しなよ? 柊子ちゃんに不安の材料を与えたくないだろ?」
「あ、ああ。そうだな」

俺はうなずき、兄と連れ立って歩き出す。
今日は実家に法事の打ち合わせで集まることになっている。用事を済ませたら、俺は柊子と暮らすマンションに戻る予定だ。

「柊子ちゃんとの暮らしは順調なんだろう」
「順調だよ」
「まだ何もしてない?」

見透かした態度に俺はぐっと詰まった。本当に余計なお世話過ぎる。

「してなくても順調だから安心してくれ」

というか兄貴には関係ないだろと、楽しそうな兄貴をにらむ。俺の恋の成就もまた、愉快で仕方ない様子なのだ。

「やっとふたりが素直に向き合えたんだから、平穏無事な生活を祈ってるよ。どうしたいか、お互いにコミュニケーションをさぼらずに伝え合うんだぞ」
「わかったよ。今までコミュニケーション不足で誤解していたところもあるから、そこは気をつけるつもりだ」
「ところで、邦親と瑠衣さん。無事挨拶が終わって、夏頃には結婚式らしい。さっき連絡があった」
「急だな。帰ったら柊子に聞いてみよう」

実家での用事を済ませたら、急いで帰ろう。
柊子が夕飯を作って待っている。