離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる

『おまえ、どうする?』

この件が正式に決まったとき、中学三年の私と瑛理は放課後のベランダで外を眺めていた。

『今までなんとなく有耶無耶にできるかと思ってたけど、俺たちの結婚、じいちゃんたちも親も本気みたいだ』

私は頷いた。確かに許嫁といっても形ばかりだと思っていた。美優さんの件が持ち上がるまで、両家がそこまで熱意を持って親戚関係を結ぼうとしていることが私たちには伝わらなかった。逆をいえば、これで私たちの結婚は確定した。

『めんどくせーよな』

瑛理が言って、私は彼の横顔を見た。
正直に言えば、この頃私は少しだけ瑛理が好きだった。ほのかな恋心があった。
中学に入り、私はショートボブの快活で男勝りな女子になっていた。瑛理も話しかけやすくなったようで、関係は変化していた。軽口をたたきあう、同性の友人のような気やすい仲になっていたのだ。
友達として接すれば、瑛理は気の合う仲間だった。そして、私にとっては一番親しい男子だった。瑛理といつか結婚するのだと思うと、胸がぎゅっとなるくらいには意識していた。
その瑛理が心底気だるそうに言うのだ。

『なんで、自由に結婚できないんだろ』
『瑛理は好きな子、いるの?』

私はショックを受けつつ尋ねた。瑛理が首を振る。

『いない。でも、これからできるかもしれないじゃん』

つまりそれは私ではない。それはそうだろう。私は女子らしくないもの。瑛理と仲良くなれたのはよかったけれど、それで瑛理の恋愛対象からは外れてしまったのかもしれない。