『え~と。本日は、お忙しい中なのに、この同窓会にご出席どうもです。』

無理に丁寧に喋ろうとして、おかしな日本語の挨拶が始まった。

武志は、隅に座って微笑んでいるガイドの中山を見ていた。

ほんの2分程のスピーチで、秀樹の額は汗だらけであった。


『秀樹、ガイドの挨拶はないのか?』

『そんなもんねぇよ。』

普通は、「本日は我が社を・・・」とかするものでは?とも思ったが、恐らくはバスの中で済ませたのであろう。

少し残念であった。

こうして、同窓会の第一部が開宴したのである。

みんなはそれぞれにあの頃の思い出話に盛り上がっている。

『武、お前は何で結婚してないんだ?』

余計なお世話だ!

その質問を、そっくりそのまま返してやろうかとも思ったが、ここには見当たらない坂本楓のことを思い出していた武志は、思わず口にした。

『実はオレ、中学の時に好きなコがいてな。未だに忘れられないんだ。ハハ。』

『へ~。お前らしいな。副会長の神崎ご令嬢か?お前たちは噂あったからなぁ。残念だが、彼女は今アメリカだ。』

『いやいや、そうじゃない。あれは、ただの噂だ。そうだ!そもそも噂の根源はお前じゃないか!全く。』

『まあまあ、過ぎてしまったことだ。ハハ。じゃあ誰だ?まさか・・・あの「バケモノ」じゃあなえよな?』

その瞬間、武志は秀樹を突き飛ばしていた。

彼女への想いが、そう反応してしまったのである。


『彼女は、そんなんじゃない!謝れ!』

予想もしていなかった反応に、秀樹は反抗する気も起こらなかった。

声を荒げた彼を、親友は初めて見たのである。

全員が、何事だ?と注目した。