桜木中学校から車で15分ぐらいの距離に、料理旅館の「桜燐楼」があった。

今夜の会場である。

そこへ、時間ギリギリに武志の車が到着した。

入り口に、女性が一人立っていた。

武志は、あのガイドさんだなと思った。

薄黄色のミニスカートに黒いハイヒール。

上半身は肩から胸元まで露出させており、離れていても谷間が気になった。


(やば!予想以上じゃないか。)

車を降りた武志に、彼女が近づいた。

『ガイドの中山です。小田様ですね。今夜はよろしくお願いします。皆さんもうお待ちかねですよ。』

武志はその身のこなしや声、そして美しい顔に時めく自分を感じていた。

中へと案内されながら、どうでもいいことをきいていた。

『そんな格好で寒くないですか?』

きいてから、武志はしまったと思った。

(なにやってるんだオレは。そんなこと言ったら、まるで見てました!みたいなものじゃないか。それに、イヤミに聞こえたらどうしよう・・・)

武志の心配をよそに、彼女は何も気にしていない様子で、笑顔だけで、優しく応えた。

(…?)

その笑顔に武志の心が一瞬、「ドキッ!」と一打ちした。


それから彼は、「本当に」気になっていたことをきいた。

『あの・・・、今夜の出席者の中に、年配の方は見えてませんか?』

『担任の先生でございますね。残念ながら、ご案内をしたのですが、今日はご都合が悪いということで、見えていません。』

『そうですか・・・。』

武志は、この企画の本当の立案者に、もう一度会ってみたかった。


~宴会開始~

中へ入ると、男女合わせて30名程が集まっていた。

まだみんなの顔は、十分に分かった。

『武!おっせーぞ。ほら、突っ立ってないで、ここ、ここ!』

「幹事?」の秀樹が、呼ぶと、かつての生徒会長様を、みんなが拍手で迎えた。

『秀樹「幹事」様。久しぶり。よくもまぁ、こんな企画にこれだけの人が集まったものだな。』

『そういうお前も、こうしているじゃないか。』

・・・確かに。

『武、お前もまだ独身だってな?オレもそうなんだ。実は今夜の企画には、もう一つ裏があってな。まぁ・・・後ほど。とりあえずは、始めるか!』

幹事が号令をかけ、みんなの注目が集まる。