咲が席を立ち、若い捜査員に前屈みで微笑む。

顔が近い。
胸元が覗く。

「ホワイトボードに書いてちょ〜だい❣️」

「は、はい」素直に従う若者。

歩きながら、確認する様に話す咲。

1.最初の落雷
2.ミライのパソコンサーバクラッシュ
3.その日期限の資料
4.千種駅前にオープンしたネカフェ
5.二人は社へもどらず駅へ
6.千種駅前の信号機のタイミング
7.宅配便の斜め前にバス
8.バスの運転手は山口聡
9.バスには草薙慎吾
10.宅配員は豊山豊
11.宅配員は大きな飴玉を口に
12.千種駅に車で千佳
13.七海は体調崩して早退
14.千種駅に七海
15.さしみ包丁
16.そして、大きな落雷

「凄いわね〜この中の一つでも欠けてたら、結果は違ってたはず。とんでもない偶然ね。あの時、月に虹がかかった偶然なんて、普通に思えるくらいだわ」

改めて挙げてみた事実。
偶然が招いた悲劇に、恐怖さえ感じてしまう。

だが、咲は偶然ではない何かを感じていた。
この勘が外れたことはない。

(まさか…)疑惑に胸が騒ぎ始めた。

「で…でも、事故なんて、何か一つが数秒遅かったら…って、そんなもんじゃないかな?」

ホワイトボード役の白根昴(すばる)が思わず呟いた。

「その通り。確かにね〜あと少し早かったら、出会わなかった…とかよくあることよね」

目を閉じ、思い出すかの様に静かに話す咲。

咲の出会った相手が、自分のことじゃないと感じた富士本。


「昴!もうちょっとお願い」
警察官を既に呼び捨てている咲様。

無言で違うホワイトボードへ向かう昴。

①なぜ千佳があそこにいたか?
②なぜ七海があそこにいたか?
③なぜ二人は駅へ向かったか?
④なぜ豊山はあの時間に来たか?
⑤なぜ山口はあの時間に来たか?
⑥なぜ草薙慎吾は死んだか?

「咲さん…それがわかれば苦労はしないんだが、ただもし分かっても、偶然性は否定できないんじゃないか?」

三上の目は、すっかり咲にすがっていた。

(全く、まともな奴はいねぇのか?)
 苛立つ富士本。

「あ、あの…いいですか?」

新米刑事の昴である。
今の状況で、止めれる者はいない。

「僕には刑事の勘や経験はありません。だからこそ、皆さん…ちょっとおかしいと思うんです。」

「おかしいとはなんだ?」

さすがに反抗する刑事達。
それを咲が止める。

「私もそう思うわ。君が言うと反感買うから、私が言うわね」

警官でもない咲なら良い、と言う理由はない。
セクシーなら💦いいのか?

「面白い。言ってみたまえ」

…いいらしい💧

「何で警察は回りくどく、関係者の背景から捜査すんのかなぁ?」

(フッ、そっちか)

富士本も内心、やられた…と思ったのである。