17:30。
裁判が終わり、ヘトヘトで出てきた鳳来咲。
テレビドラマのように簡単には終わらない。
色々な手続き、被告側との今後の調整。
などなど…

表は激しい雨。

「あちゃ〜やっぱ来たかぁ…💧」

今朝の彼女に、傘など持つ余裕はなかった。

なんでまた、こんな不便なとこに建てるかなぁ…とボヤきたくもなる。

すると、見覚えある車が停まった。

「咲さん。乗ってくかい?」

(やっぱり神か?イヤイヤ…ないない)

と思いながらも、乗り込む咲。


「………」(咲)

「そんなに見つめられると照れるじゃねぇか」

「刑事なんて聞いてないし!」

「聞かれなかったからな」(笑顔)

(その笑顔は、何なのよ!)

東京本庁刑事課 富士本恭介 (35才)
今回の事件に関わってもおり、原告側の補佐として、呼ばれたのであった。

「しかし、やられたよ。全くお見事でした」

突然の監視カメラ映像。
決定的かと思われた証拠。

だが提示された瞬間。

「なぜあれが偽造と分かった?」

疲れ果て、諦めていた無気力な被告の目が、微かに細まったのを、咲は見逃さなかった。

「勘よ!」

「………」(富士本)

鑑定の結果、明らかに編集、加工されたものと判明したのである。

「こりゃあ、参った!」

そこからの咲は水を得た魚。
検事側証人への追及は凄まじく、偽造により、判事も傍聴人も全て味方についたのであった。

少し雨が小降りになった頃、慌ただしい警察の無線が聴こえた……咲のバッグから。

「あっ、いやね、これにはいろいろと…💦」

「静かに!」

「千種駅前にて、殺人事件発生。繰り返す…」

途端に加速する車。
藤本が、ダッシュボードを指さす。

条件反射的に咲が開ける。
中には赤いパトライトがあった。

「早く!」

「あ、はい!」

テレビで見たのを真似て、窓を開け、屋根に乗せた…つもりが、逆さまであった。

「あらら💦」

パトライトが勢いよく転がり、伸びきった配線が切れた。

「な〜にをやってんだ!」

「すみません💧」

道路に転がったらパトライトは、後続のトラックに踏み砕かれた。

「あらまぁ……って!仕方ないじゃない!初めてなんだから❗️」

逆ギレした咲。
…が、真剣な目をした富士本を見た。

「しっかり掴まってろよ」

「は、はい。」(何か…カッコイイじゃない)

まるでレーサー並みの運転技術であった。
これが、本庁でキレ者として有名な、刑事富士本の本来の姿である。