一分後、先に言葉を発したのはあたしの方だった。
「グラス代弁償するんで···あの、本当にすみませんでした」
黙ったままの千鶴さんは難しい顔をして黙ったままだし、早くここから立ち去りたいしで出た言葉はグラスを割ってしまった謝罪の言葉。
きっと千鶴さんはその事に怒ってるんだろうし、他に話題なんてない今はさっさと代金を払って帰りたい。
そう思って言ったのに千鶴さんは何故か
「金はいらねえ」
なんて言うからビックリだ。
「え···」
「だから金はいらねえ。グラス割ったとかどうでもいいし」
「···でも、」
え?グラス割ったことを怒ってるんじゃないの?
てかそもそも冷静に考えてそれって千鶴さんに言うことなの?千鶴さんが決めることなの?
こういう場合って弁償しなくちゃいけないんじゃないの?
「あのー···、それって···」
そんなあたしの疑問を察してくれたのか優しい笑顔の楓也さんが教えてくれた。
「ここは千鶴の親父さんが経営してるクラブでね、まあ千鶴が好き勝手やってるから千鶴がいいって言ったならいいんだよ」
え!?



