君ありて幸福 【完】



もう帰りたくて、俯いたまま黙っていると「お前···」と千鶴さんの声がして顔を上げる。




え···。




上げた目線の先、ソファに座る千鶴さんはさっきの怒り顔とは打って変わって今はビックリしたような顔であたしを見ている。



なに、あたし何か変なこと言った?



「あの···」

「お前まさか···」

「はい?」


そこまで言ったところで千鶴さんは苦虫を噛み潰したような表情の後、小さく舌打ちを打った。



「あの、あたし何かしましたか···?」

「···悪い、人違いだった」

「···」

「···」




人違い!?