千鶴さんにさようならを言ってからのあたしは常に千鶴さんの事ばかり考えていた。
どんな時でも、何をしていても、誰と話していても、頭の中には千鶴さんがいた。
「ねえ、自分では気づいてないかもしれないけどさ、」
あさみの手がスっとあたしの口元へと伸びる。
「雪乃、唇噛みすぎて血出てるよ」
「⋯⋯っ」
「一日に何度も唇噛み締めてるところ見るよ。流石にもう止めないとあんたの口酷いことになる」
「⋯⋯⋯、」
「ほら」
あさみが手鏡をあたしに見せてくれた。
そこに写る自分の唇へと視線を持っていけば皮は剥けているし血が出ている箇所もあれば時間が経ち固まっている箇所もある。カサカサどころのレベルを超えてしまった痛々しい唇を目の前に、無意識のうちにここまで自分を痛めつけていた事に吃驚した。



