「会いたくないです」
千鶴さんの目を見てキッパリと言い放つ。
「あたし、聞きました。婚約の話。全て」
そう言うと千鶴さんは驚いた様子もなく「ああ」と言うだけ。
そんな千鶴さんの態度も意味がわからないし、腹が立つ。
千鶴さんがわからなくて、わからなくて、わからなくて、腹が立つ。
「ああって、どういう意味ですか?千鶴さんは知ってたんですよね?初めから。だから色々あたしにしてくれたんですよね?」
「ああ」
「なら何で教えてくれなかったんですか?どうして相手はあたしじゃないみたいな態度を取ったんですか?」
「それは、」
「千鶴さんはあたしが自分に相応しい相手か試してたんですか⋯?」
「だから、」
「どうして婚約の話を白紙にしたのっ⋯?」
もう、千鶴さんの言葉なんて聞いていなかった。
溜まりに溜まった疑問をただただ千鶴さんにぶつけた。
「破棄したならもう会う必要ないじゃないですか⋯」
「⋯⋯」
「もう、何の関係でもないじゃないですかっ⋯」
「⋯⋯」
友達と言われてもピンとこない。
知り合いにしては同じ時間を過ごし過ぎた。
婚約者という関係はもう存在しない。



