「え、あの···、あの···!」
ズンズンと階段を登っていく千鶴さんはあたしの声なんか聞こえてないかのようにこっちを振り返ることもない。
なんなの、これ。
グラスを割ってしまったことよりも今は千鶴さんに手を引かれているこの状況に追いつけずパニックだ。
だって千鶴さんが、だよ?
千鶴さんがあたしの手を引いて階段を登っている。
ありえない状況。
理解できない状況。
もしかしてグラスを割ってしまった事に腹を立ててこれから怒られるのかな···。
弁償とか?
どうしよう、どうしよう···!
「おい、」
そんなことをグルグルと考えていると二階席に着いたのか千鶴さんがあたしの方を振り返った。



