君ありて幸福 【完】




もしも、あの日千鶴さんに出会わなければ。


もしも、あの日Trustに行かなければ。





そのまま婚約の話が進んで、顔を合わせて、あたしはお父さんに決められたまま、千鶴さんがどんな人なのか知らないまま。



──────千鶴さんの事を何も知らないまま。




千鶴さんの婚約者として今も居られたのだろうか。







果たしてあたしがそれを望んでいるかと言われたら⋯分からない。


だって何も知らないまま、自分の意思ではない人と結婚なんてそんな残酷な事はない。

だけどもしそうなっていたとしてもあたしは千鶴さんを好きになっていたと断言出来てしまう程にはもう彼を好きになってしまっている。



どちらにしても千鶴さんがあたしを好きになってくれる事はないんだろうけど。