君ありて幸福 【完】




「雪乃っ⋯」

「うっ、⋯うぅ⋯」

「辛いよね」

「っ⋯う、⋯んっ」

「頭の中グチャグチャだよね」

「っう、⋯ひっ⋯く、」

「雪乃⋯」

「もうっ、どうしたらいいのかわか、んないっ⋯」

「っうん、」

「お父、さんの事もっ、ショックだし⋯っ辛いっ」

「うん⋯」

「けどっ、⋯千鶴さんに振られた事が、一番⋯辛い⋯」

「⋯⋯、」

「今まで一人で浮かれてたっ⋯」

「⋯⋯」

「馬鹿みたいっ⋯恥ずかしいっ⋯、もう、⋯やだ⋯!」

「雪乃⋯」

「苦しいっ」





お父さんに言われた言葉が頭の中でグルグルと廻っている。

きっとお父さんの口から出た言葉はこの先あたしを苦しめて⋯消えることはない。


けれど、それよりも。


実の父親に酷い言葉を浴びせられた事よりも、

あたしは千鶴さんに振られてしまった事が悲しかった。





千鶴さんがあたしを選んでくれなかった事⋯いや、あたしが彼に見合う女性になれなかった事。

この先千鶴さんが好きだと思える人が出来る事。

その人と共に人生という道を歩いて行く事。




そっちの方が何倍も、何倍も、何倍も苦しかった。