「···え、あの、」
「手が切れる」
「え、···」
目の前の彼、千鶴さんは無表情でそう言った。
だけど千鶴さんが目の前にいて、あたしに話しかけている。今の状況を理解しきれないあたしは伸ばしかけている手を引っ込めることも出来ずに千鶴さんを見た。
その間にも周りではいきなりの千鶴さんの登場で色めき立ち、キャーキャーと歓声が鼓膜を刺激する。
そんな周りに苛立ったのか千鶴さんは「チッ」と舌打ちをすると
「え、えっ?」
いきなりあたしの手を掴んであろう事かあの二階席へと続く階段を登った。
更にフロアが悲鳴に包まれたのは言うまでもない。



