「っなに⋯それ⋯」
「っ」
「何よそれ!千鶴さんも、雪乃のお父さんもっ、何なのっ!?」
さっきまで「ゆっくりでいいよ」と優しい声で声を掛けてくれていたあさみとは思えない怒鳴り声。
まるで自分の事のような悲痛な声。
「千鶴さんも千鶴さんだけどっ、でも!⋯お父さんは何を考えてるのっ!?」
「わか⋯んな、」
「っ婚約破棄?だったら千鶴さんはどうして雪乃にあんな事するんだよ!⋯どうしてあんな表情するんだよ!」
「っ」
「雪乃のお父さんがそんな人だとは思わなかった。思わなかったよっ⋯」
「っあさみ、」
「千鶴さんの考えてる事も、雪乃のお父さんの気持ちも、何にもわかんない!分かりたくないっ!」
「っ、」
「本当っ、最低っ⋯、最っ低っ⋯!」
顔をグシャグシャに歪めて、ネイルが施された爪を気にもせず強く拳を握りしめて目に涙を浮かべるあさみ。
並べる様な言葉ではないそれは、今正にあさみが思っている事で。
それが物凄く心強くて。
「っあ、⋯さみっ!」
もう、滝の様に涙が溢れ出した。



