君ありて幸福 【完】



「もうっ、ひっ⋯、本当にごめんっ⋯うっ、」



自分がこんなに泣き虫だとは初めて知ったっていうくらい千鶴さんのこともお父さんのことも、もう全てが苦しくて悲しくて辛くて仕方がなかった。





「あさみも、っ青木くんもごめんっ⋯」


「雪乃。取り敢えず落ち着こう?ね?大丈夫だから」



うっ、うっ、と嗚咽を繰り返しながらボロボロと涙を零すあたしの背を擦りながら優しい声色で語り掛けてくれるあさみにこれ以上は困らせまいと何度も何度も頷いて見せるけれど涙は止まらなくて。

それが更に二人に迷惑と心配をかけているのが分かっているからまた涙が出てきて正に悪循環。




「雪乃さん、謝らないでください!俺はあさみさんから雪乃さんが泣いてるって聞いて勝手に着いてきたんです。もう夜だしあさみさんを一人で行かせるのも心配でしたし、雪乃さんの事も心配だっただけなので⋯、だから謝らないでくださいよ」



そう言いながら「どうぞ」と差し出されたハンカチ。



「お、私より乙女だね青木」



少しでも明るくさせようとあさみの声も明るくなる。



「使ってください!」

「っありが、とうっ⋯」




青木くんにハンカチを借りて涙を拭っていく。





もう、何なのこの二人は。

二人の温かさにさっきとは違う涙も流れてきたのは言うまでもなかった。